□ Newsletter No.2 □


EAR建設1周年記念式典

日時:2002年6月25日
場所:インドネシア共和国西スマトラ州 アガム県ルブクバスン アガム県庁

1.背景

 インドネシア航空宇宙庁(LAPAN)主催のEAR建設1周年記念式典が上記の日時及び 場所において開催された。 本式典の目的は、EAR建設1周年を機にEARのシステムならびに研究成果を EARが設置させているAgam(アガム)県の市民に紹介することにより、EARの必要性ならびに 有用性を今まで以上にアガム県の市民の方々に理解頂くことである。
 京都大学宙空電波科学センター(RASC)はEARの運営に関しLAPANと協力関係にあり、 両者の努力によりEARの定常的な観測を実現している。
今回の式典の開催にあたり、LAPANからRASCに対し式典への参加招待ならびに これまでのEARの研究成果の発表依頼があり、 深尾、津田、山本(真)の3名が記念式典に参加した。

2.式典のスケジュール

 式典のスケジュールは下表の通りであった。 概要は以下の通り。

Opening  - RASC、アガム県知事、LAPANによるWelcome Speech
Session I - EARのシステム概要ならびにこれまでの研究成果発表
Session II - インドネシア全域における気候モデリングならびにデータ解析の 成果発表
Session III- 西スマトラならびにアガム県における気候モデリングならびに データ解析の成果発表(EARの将来計画も含む)。



----- タイムスケジュール -----
9:00-9:30
 Registration
9:30-10:30
 Opening  Dr. Eddy Hermawan (Moderator)
 Welcome speeches by :
 - Radio Science Center for Space and Atmosphere, Kyoto University, Japan
 - Bupati Agam
 - LAPAN
10:30-10:45
 Coffee break
10:45-11:45
 Session I  Dr. Eddy Hermawan (Moderator)
 1.The Equatorial Atmosphere Radar : System Configuration and First Results
  Mr. M. Yamamoto
 2.Convective Excitation of Atmospheric Waves over Indonesia
  Prof. T. Tsuda
 3.Radio Acoustic Sounding System (RASS) with EAR for Continuous Measurement of Atmospheric Temperature
   Dr. Eddy Hermawan
 4.Discussion
11:45-12:30
 Session II  Dr. Mezak A. Ratag  (Moderator)
 1.Climate Model in Air Pollution
    Suryadi/Yunus
 2.Boundary Layer Radar and Air Pollution
   Budi Suhardi DEA
 3.Discussion
12:30-14:00
 Lunch break
14:00-15:00
 Session III  Budi Suhardi DEA  (Moderator)
 1.Remote Sensing for Agam and Tanah Datar district
   M. Natsir
 2.Climate Modeling and Its Application in Indonesia (West Sumatera)
   Dr. Mezak A. Ratag
 3.Future Development of Equatorial Atmosphere Observatory Kototabang (an overview)
   Dr. Eddy Hermawan
 4.Discussion
15:00-15:15 Coffee break
15:15-15:45 General discussions  Sri Kaloka (Moderator)
15:45-16:00 Clossing




3.RASC研究者の参加状況

式典はLAPAN主催で行われ、RASC研究者は以下の活動を行った。
 深尾:OpeningにおけるWelcome Speech
 津田:SessionIにおける講演(インドネシア域における大気波動の概要紹介)
 山本(真):SessionIにおける講演(EARのシステム紹介ならびにこれまでの研究成果の発表)
 なお、RASCにて修士課程及び博士課程を修了したLAPAN職員(Eddy Hermawan)が 本式典の開催にあたり中心的な役割を果たしていた。

4. 式典の成果

 (1) 気象関係の仕事に従事する市民に留まらず、アガム県知事を始めとする多くの市民 (約80名)の参加があり、EARに対する地元の関心が伺えるものであった。
 (2) EARのみならずインドネシア全域ならびに西スマトラでのモデリング ならびにデータ解析の講演もあり、市民が気象に関する研究活動を理解するのに 非常によい構成であった。参加者もメモをとり熱心に聴講していた。
 (3) いずれのRASC及びLAPANの発表に対しても多くの参加者の質問があり、非常に活発なdiscussionが行われていた。 (4) 日本人の研究者に対し参加者は友好関係を築きたいと考えており、質問の中でも 今後とも多くのdiscussionを通じて研究成果の相互理解を含めたいという意見があった。

5. EARの運用における今後の課題

式典は非常に盛会であり、多くの成果があった。 しかし参加者とのdiscussionを通じ、今後のEARの運用に対し以下を考慮する必要が あることが明らかとなった。

 (1) 日本の高い電子技術の結晶の一つであるEARのハードウェアならびにソフトウェアの システムを理解することにより、電子技術に対する力を高めたいとアガム県の市民は考えている。
 EARのシステムを今後さらに紹介し地元の方々に理解していくのは勿論のこと、今後アガム県の学生が日本にて電子技術を学び、アガム県での技術振興に生かすシステムができるようであれば、EARもアガム県での電子技術向上に積極的に参加していく必要がある。
 (2) また、アガム県の市民は地元の気象予報にEARを活用できるか否かということに強い関心を持っていることが明らかとなった。
 EARのみで気象予報を行うのは困難であるが、今後地元において気象予報システムを作られるようなことがあれば、EARのデータが気象予報システムに活用されるよう 適切なデータ提供を考えていく必要がある。

6. 地元からの要望

 なお式典に先立ち、West Sumatra州Agam(アガム)県の県都であるLubuk Basung(ルブクバス ング)でWakil Bupati(知事)Syafruddin Arifin(シャフディン・アリフィン)氏と歓談し た。県の関係者が数名同席した。
 まず深尾がEARに対するAgam県のサポートと配慮に謝意を表した。これに対して知事は、EARを誇りに思っており、関連の活動がAgam県におけるHuman Resourcesの開発に資すること を期待していると述べた。
知事より以下のことに対する関心が表明され深尾が関係者にその旨伝えると回答した。
 ・Agamが京都府下の自治体と姉妹都市になることは出来ないか?湖(マニンジョウ湖)や農産物などもある。
 ・かって、三菱とマレーシアの合弁会社が県下の石油開発に関心を持った。しかし Agamの「GAM」をGerakan Aceh  Merdeka (Aceh Movement for Indepandence)と 誤解して立消えとなった。大変残念に思っている。Agamは騒動には無縁の全く平和な県 であることを伝えて欲しい。

(京都大学宙空電波科学研究センター・助手・山本真之)



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▽ MFレーダー観測再開と写真集 


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